名城大学 理工学部 メカトロニクス工学科 Department of Mechatronics Engineering

INTERVIEW 教員インタビュー

教員インタビュー INTERVIEW

佐伯 壮一
佐伯 壮一
名城大学理工学部 メカトロニクス工学科

生体組織を傷つけずに硬さ・柔さを測定。 医工学の枠を越え、産業の世界でも マイクロ断層可視化の技術を展開していく

医師とタッグを組んで研究開発。 疾患の早期診断に役立てる

機械

マサチューセッツ工科大学で1/1000ミリを見えるようにする技術を学び、帰国後は可視化をメインに研究していましたが、縁あって医工学の世界へ。研究室では、生体組織の粘弾性や血流などを非接触で測定できる装置の開発に取り組んでいます。装置の仕組みは、光をあてて内部を検出しつつ、少し力を加えることでの変形を捉えるというもの。深さ1ミリの中を断層可視化しながら、組織の硬さや柔さを測ります。

皮膚の硬さや毛細血管の血流はシワやたるみと関係するため、アンチエイジングの研究で活用されたり。整形外科の分野では、軟骨がすり減って痛みが生じる膝関節症の早期診断に役立ったり。動脈硬化やガンなども、組織の硬さ・柔さを測ることで疾患の診断が可能です。

化粧品メーカーの研究所では、すでにこのマイクロ断層可視化装置が導入されています。医療用途としては、まだまだ実証実験が必要なため、医師とタッグを組み、プロジェクトを推進しているところです。

実際に医療現場へ入り、研究開発を進めている大学は、日本では数少ないと思います。患者さんを相手にしているため、研究室で医療機器システムをつくったら、提携大学の施設や病院で動物実験をする場合も。いま力を注いでいる軟骨の断層可視化装置は、形になってきています。そこにロボットを導入して診断できるシステムを名古屋大学医学部、大阪市立大学医学部とともに構築している段階です。

今後は、再生医療製品メーカーと連携し、移植前の再生軟骨を検査する機器の開発にも着手する予定。再生軟骨の性能が予後の良し悪しに関係があることを実証できればと考えています。

複眼的に物事を捉えて技術を応用。 アイデア次第で答えは無限に

佐伯 壮一

カーボンニュートラルで大きな転換期を迎えている自動車メーカーから、人の診断と同じように燃料電池の内部を細かくチェックしたいという要望があり、2020年から共同研究をスタートしました。燃料電池の中に、ある物質が入っていると、車が走らなくなったり、壊れたりすることが多くなるため、断層可視化できる装置を生産ラインに導入し、不具合を未然に防ぐのが狙いです。装置の一部は、すでに出来上がっています。

人体も皮膚の表面から1ミリくらいのところに、あまり良くない物質や構造が存在すると変調をきたすため、広い視野で考えれば、人も車も原理は同じ。最近は材料メーカーからも、硬さ・柔さをまったく触らずに測りたいという依頼を多くいただくようになりました。医工学に限定せず、複眼的に物事を捉え、さまざまな分野で断層可視化診断装置の実用化に向けた取り組みを展開しています。

研究開発に答えはありません。学生たちには、「答えがないものに対してアプローチするということをイメージしてください」と伝えています。新しいものをつくっていくうえで、アイデアは答えのひとつです。誰も思いつかないのは、答えがないということ。そのひとつをどうやって見つけ出すかが醍醐味なので、多くの学生にその楽しさを味わってほしいと思っています。